わたしと専務のナイショの話

 




 マンション内に入り、あ、エレベーターホールに人が居る、とのぞみが思った瞬間、京平が手を離していた。

 なんで離すんですかっ、とのぞみが目で訴えると、

 お前が人前でイチャイチャしたくないって言ったんだろっ、と目で訴え返される。

 二人で無言で目で会話をしていると、一緒にエレベーターを待つおばさんが言ってきた。

「あら。
 もしかして、新婚さん?

 いいわねえ」

 ……もしや、額に貼ってありましたか?
と思ったのだが、雰囲気でだろうか。

「貴方たち、新婚旅行は?

 まだなの?
 そう。

 二人で旅行が楽しいのなんて、今のうちよ。

 私たちは、もう旅行はそれぞれの友だちと行くのよ。

 旦那となんて、行っても楽しくもない」
とご主人に対する愚痴が始まる。

 ……はあ、と聞きながら、気がついたら、京平と二人、手を握り合っていた。

 なんとなく、不安になってきたからだ。

 この先のことが。