わたしと専務のナイショの話

 


 去り際、のぞみはかなり明るくなってきた空の下、もう一度、校舎を見上げた。

 変な感じだ。

 お世話になりました、とみんなで頭を下げて、一度別れた相手なのに。

 こうしてまた出会って、手をつないで歩いて。

 きっと、この先、一生、何十年もこの人と居る――。

「ほら、行くぞ。
 坂下のぞみ」
と車のドアを開けながら京平が言ってくる。

「だから、出席とるように呼ばないでくださいよっ」
と車に乗ると、

「そういえば、出席とるたび、こいつ、名前は可愛いよなって思ってたんだよな」
とシートベルトを締めながら、京平が言い出した。

「……名前はってなんですか」

 京平は、
「のぞみって、俺の娘につけようかとか思ってたのにな」
と小首を傾げながら、車を出そうとしてやめる。

 こちらを振り向いて、少し笑った。

「俺の人生、いろいろあったが――。
 親父にけしかけられて、教員をやめたり」

 ……やっぱりそうか、と思うのぞみに京平は言ってきた。