わたしと専務のナイショの話

「式のとき、御堂に言われたんだ。
 お前がまだ、プロポーズされてないと言っていたと。

 そういえば、常にどさくさ紛れで。

 お互いの気持ちがちゃんとしてからは、なにも言ってなかったなと気がついたんだ」

 坂下、と京平が朝日を背に、のぞみの両手をつかんでくる。

「俺と結婚してくれ。
 俺と一生を共にしてくれ。

 お前を前にすると、俺は俺じゃないみたいになる。

 お前とお茶をしただけで、やり遂げたと思ったり。

 名前で呼ばれただけで、舞い上がったり。

 でも……

 そんな自分じゃないような自分が、なんだか嫌いじゃないんだ。

 出席番号、八番。

 坂下のぞみ。

 俺と――

 結婚してくれ」

 涙で言葉が出なかったのだが。

 京平は、何故か、のぞみの両手をつかんだまま、挙動不審に、何度も振り返っている。

「イエスだな、イエスでいいな。
 まあ、もう結婚してるしな」
と途端に、いつものような事務的な口調になって、京平は言ってきた。