わたしと専務のナイショの話

 


 それから、タクシーで京平のマンションへと戻った。

 鍵はあのとき、もうもらっていたが、今日は、京平と一緒なので、ただ、トコトコ京平のあとをついて行った。

 玄関を入ると、京平の家の匂いがした。

 今はまだ嗅ぐと、どきりとするが。

 いずれ、その匂いも感じなくなっていくんだろうな、とのぞみは思った。

 人は自分の家の匂いは感じない。

 鼻が慣れてしまっているからだ。

 そして、この匂いも変化していくんだろうな、とのぞみは思う。

 自分が住むことによって、新しい匂いが加わるからだ。

 のぞみがそんなことを考えながら、リビングで佇んでいると、くるりと振り向いた京平が、腕時計を見て言ってきた。

「今から、各自の部屋で、三時間の仮眠をとる」

「……はい?」

 軍隊か、という京平の口調に、思わず、のぞみは訊き返していた。

「三時間後、此処に集合だ。
 疲れているだろうが、一分一秒遅れるなよ」

 じゃ、と言って、京平はさっさとおのれの部屋に引きこもってしまう。