わたしと専務のナイショの話



 

「穴がたくさんありますね~」

 島に着いてすぐ、穴にはまって、アリスになりかけたらしいのぞみは、仔うさぎ見たさに、しばらく、道の端にしゃがんで穴を覗いていた。

 その間、京平は黙って、のぞみの後ろに立っていた。

 うさぎよりも、ちょこんと座ってうさぎを見ているのぞみが可愛かったからだ。

 ああ、あれも写真に撮っておけばよかったな、と今になって思う。

 あまりに可愛らしくて、写真を撮るのさえ、忘れていた、と樫山辺りに後ろから、はたかれそうなことを思いながら、島を出る前、桟橋近くで撮ったのぞみの写真を見た。

 夕陽に照らされ、俯くのぞみが綺麗だ。

 あのとき、
「あー、楽しかったです」
と言ったのぞみを見ながら、今、この瞬間が永遠に続けばいいと思った。

 よく聞くセリフではあるのだが。

 今まで、そんな言葉を吐く人間を理解できないと思っていた。

 人生は前へ前へと進んでこそ、生きている意味があるというのに、なにをふざけたことを言ってるんだ、と思っていたのだが。

 あのときは本当にそう思った。

 その気持ちを伝えたくて、

「……このまま帰らないっていう手もあるぞ」
とのぞみに向かい、言ったのだが、彼女は振り向き、

「嫌ですよ」
と言ってきた。