わたしと専務のナイショの話

 


 立ち上がったあと、うさぎに目を奪われながら、海岸沿いの道を歩いていたのぞみは、
「うひゃっ」
と声を上げる。

 なにかに足をとられかけたからだ。

 下を見ると、あちこちに穴が空いている。

「うさぎの穴ですかね。
 アリスになるとこでした……」

「落ちたくらいでなれるんなら、落ちてこい」

 仔うさぎ潰すなよ、と京平が言ってくる。

「穴がたくさんありますね~」

「此処はアナウサギが多いらしいからな。
 春は仔うさぎが顔を出してたりするらしいぞ」

 それは見てみたい、と思いながら、のぞみはしばらく、穴を覗いていた。

 京平も急かすことなく、後ろに立っている。

 のぞみを待ってくれているのか、自分も仔うさぎが見たいのかは謎だが。

 しゃがみ込んだのぞみの頭の上では、崖に繁茂しているシダのような植物が揺れる音がし、潮風が鼻先をくすぐる。

「なんだかまったりした時間が流れてますよね、此処」
と振り返りのぞみが笑うと、

「お前の周りは何処でもまったりした時間が流れているが……」
と京平は言う。