わたしと専務のナイショの話





 船を降りたのぞみは、桟橋にある赤い鉄の建造物を見上げる。

 船のなにかなのかなとは思うのだが、うさぎの耳をつけた真っ赤な鳥居のようにも見える。

 すると、その下の方でうごめくものを見つけた。

「専務っ。
 うさぎがすぐそこにっ。

 もこもこしながらやって来ますっ」

 いや、別に、うさぎは、もこもこしながらやってきているわけではないのだろうが、のぞみの目には、そう見えた。

 近づいてきた黒いつぶらな瞳の茶色いうさぎは、なにを思ったか、のぞみたちの前で、いきなり、ぺたっ、とその場に伏せる。

 ひーっ。

「悩殺されてますっ!」
と叫ぶと、そうかそうか、と後ろで京平が言う。

 この大久野島のうさぎが何処から来たのか、諸説あるようだが。

 昭和四十年頃に、何処かの小学校で飼い切れなくなったうさぎを放したのがきっかけ、という説が広く知られているようだ。

 まあ、それはともかく、可愛い。