わたしと専務のナイショの話




 忠海港からフェリーに乗ったのだが、そのわずか十五分の間にも、また京平は眠ってしまっていた。

 どんだけ眠いんだ。

 専務、太陽に照らされた瀬戸内海、綺麗ですよ、キラキラしてて、とのぞみがひとりで海を眺めていると、なにかが肩に触れた。

 隣りに座っている京平の頭がのぞみの肩に寄りかかって来たのだ。

 ぎゃーっ、と心の中だけで叫ぶ。

 どういうことですかっ。

 やめてくださいっ。

 警察を呼びますよっ、とのぞみは動揺する。

 整った京平の顔がかつてないくらい近くにあったからだ。

「いや、あんた、キスとかしたんでしょ?」
と万美子辺りに聞かれたら、言ってきそうだが、

 いやいやいや。

 だって、そういうときは、目を閉じちゃうし。

 こんな長い間、密着してないしっ。

 電車で、居眠りしている美女に寄りかかられたおっさんかっ、というくらい、のぞみは動揺していた。