「結局、専務と毒ガスの島に行くのか」
昼頃、専務室の横の秘書室に居たら、祐人にそう訊かれた。
……うさぎ島と言ってください、と思いながら、のぞみは、
「はい。
あの、何故、ご存じなんですか?」
と訊く。
「専務が鞄に広島の旅行雑誌をしまうのを見たからだ」
……専務、職場に持ってこないでください。
じつは、うさぎに会いに行くので、浮かれてるとか?
と思っていると、仕事をしているのぞみの額をなにかで祐人がつついてくる。
顔を上げると、
まだあったのか……、
あの、金のチョコ棒だった。
「やめてくださいっ。
仕事が進まないじゃないですかっ」
とそれを手で払いうと、
「坂下。
少々のことをされても、動じないくらいじゃないと、秘書は務まらないぞ。
キスでもしてみようか?
動じずに続きを書けたら、褒めてやる」
と祐人は真面目に叱るときのような顔で言ってくる。



