言うだけ言って、遼一郎はまた、実家に向かい、走っていった。
翌朝、
「行ってきますー」
とのぞみが仕事に行こうとすると、のぞみより出勤時間の遅い信雄が玄関までやってきて、
「京平さんと出かけてもいいが、日帰りだぞ、のぞみ」
と念押しするように言ってくる。
「もちろんだよ。
専務もそう言ってたしね」
と言うと、信雄の目に、
さすが、京平さんだな、という光が宿る。
またしても、専務の株が上がってしまったようだ。
いや、私自ら上げたんだが……と思っていると、
「まったく、遼一郎の奴は……」
とぶつぶつ文句を言いながら、信雄はリビングに戻っていった。
遼ちゃんが悪役になってしまった……。
ごめんね、ありがとう、遼ちゃん、と思ったが。
そもそも、遼一郎は、なんにも気にしない男なので、信雄に文句を言われても、特に気に病んだりはしなさそうだった。



