わたしと専務のナイショの話

 



「ただいまー」
とのぞみが自宅のドアを開けると、笑い声が聞こえてきた。

 若い男の声だ。

「ただいま」
ともう一度言いながら、リビングに入る。

 すると、貴方、どちらのアスリートですかというような、ぴっちりしたサイクリング用のウェアを着た筋肉質な男がダイニングテーブルで夕食を食べていた。

「おう、お帰り、のぞみ」
と男は振り返って笑う。

 従兄の遼一郎(りょういちろう)だ。

「あれ~、遼ちゃん、どうしたの?
 岡山に転勤になったんだよね?」

「そう。
 ちょっと休みがとれたんで、岡山から自転車で実家に帰ろうと思って。

 で、おばさんとこにも顔出しとこうと、ついでに寄ったんだが。

 お前、もう就職したんだってな」
とそれは、いつの話だというようなことを呑気に言う。

「のぞみ、就職おめでとう」
と遼一郎はビニール袋を差し出してきた。