わたしと専務のナイショの話

 棚と本のわずかな隙間に、こちらを凝視している誰かの目があったからだ。

 ぎゃーっ、と心の中で叫んだのぞみは慌てて本を棚に戻し、なにも借りずに、急ぎ足でそこから離れた。

 図書館なので、走れないからだ。

 だが、誰かが追いかけてくる気配がある。

 変質者っ?

 いや、此処、図書館だけどっ。

 こんな明るいところに現れるかなっ? 変質者っ、と思いながら、図書館とカフェの間のエスカレーターを駆け下りていたら、下にちょうど見回り中のお巡りさんが居た。

 下の店に、警察官立寄所というステッカーが貼ってあるのだが。

 ああいうのを貼っている店にお巡りさんが立ち寄っているのを見たことがなかったので、貼ってあるだけなのかと思っていたのだが、今日は本当に居たようだ。

 すごい形相で降りてくるのぞみに気づいたその若いお巡りさんが、
「どうしましたっ?」
と駆け寄ってくる。