わたしと専務のナイショの話

 



『今日は、夜は会えなかったが、なにか変わったことはなかったか』

 夜、電話してきた京平に、
「ありません」
とのぞみは答える。

 毒ガスの島と吊り橋に詳しくなったくらいですよ、と手許の旅行雑誌を見ながら思った。

 うさぎ島は、別名毒ガスの島と呼ばれている。

 昔、日本軍が毒ガスを製造していたせいで、地図から消されていた島だったからだ。

 でも、今は、うさぎでいっぱいの島だ。

 もふもふのうさぎが気がついたら、足許にすすすっと寄って来ていたりするらしい。

 ちょっといいかも、と思い始めていた。

 だが、それらの雑誌の下にある書店の袋を眺めていて、思い出した。

「そういえば、今日……」

 そう言いかけ、
「ああ、いえ、なんでもありません」
とのぞみは言う。

 誰かが自分をつけていた気がしたが、まあ、気のせいだろう。

 そう思ったからだ。