わたしと専務のナイショの話

 



 のぞみが廊下に出ると、万美子が待っていた。

 壁に背を預けて立つ、眼光鋭いその姿に、

 ひ~っ。
 まるで、ヤンキーの人に待ち伏せされてるみたいだーっ、と思うと、

「あんた、今、まるで、ヤンキーに待ち伏せされてるみたいだって思ったでしょ?」
と万美子が言ってくる。

「……万美子さんは人の心を読めるのですか?」

「その一言で、すべて白状してるようなもんだけど。
 あんた、今、祐人となにか約束した?」

「してません。
 私はちょっと一人で本屋さんに行くので」
と言うと、あら、そうなの、と言う。

 いや、あの調子だと、確実に専務に旅行に連れてかれるな、と思ったので、せめて旅行先を調べておこうと思ったのだ。

 ネットで調べるのもいいが、本の匂いを嗅ぎながら、旅先の風景を眺めるのもいい。

「でも、どっか誘われてたでしょ」
と突っ込んで訊いてくる万美子に、

「図書館ですよ」
と言うと、図書館っ、と万美子は声を上げる。