わたしと専務のナイショの話

「いや……行きません」

 どういう流れで言ってんですか、それは、と思う。

 私にキスして、専務を怒らせたばかりなのに、図書館に誘うとは。

 まあ、この人の中では、私は物の数に入ってないんだろうな、と思いながら、のぞみは
「では、失礼します」
と挨拶した。

「もう帰るのか」
と祐人が訊いてくる。

 はい、と頷くと、ファイルを重ねて置きながら、ひとつ溜息をついた祐人は、
「疲れてるんで、なにか小話(こばなし)でもしてけ」
と言い出した。

「いや、なんでですか。
 私、御堂さんに小話などしたことないと思うんですが」

「昼間してたじゃないか。
 猫にひかれた女の話を」

「あれ、小話じゃないですからね……」

「疲れてるときに、お前のしょうもない話を聞くと、ちょっとホッとするんだよ」
と祐人は言う。

 しょうもない話とか言われると、話す気が失せるではないですか、と思いながらも、のぞみは言った。