わたしと専務のナイショの話

「よくご存知ですね」
とのぞみが言うと、

「昔、どっかの誰かに一緒に行かないかって言われた」
と言う。

 へえー、とのぞみが頷いたとき、後ろで、どっかの誰かが、
「私よ」
と言った。

 振り向くと、万美子が立っている。

「お疲れ様」
と冷ややかに祐人を見て行ってしまった。

「そうか、お前か」
と祐人は笑って、万美子の背に向かい言っていたが。

 ……振り向き様に、斜めに叩き斬ってきそうな感じなんですが。

 御堂さん、意外と気配を感じない人ですね、とのぞみの方が怯える。

 しかし、どっかの誰かはないでしょう、と思ったのだが。

 誰が言ったのかわからないよう、万美子に気を使ってそう言……

 ……いそうにはない人だな、と一緒に帰り支度を始める祐人を眺める。

 本当に忘れていたのだろう。

 男の人って、無神経だよなあ、とのぞみは思う。

 まあ、向こうから見たら、こっちも無神経なところがあるのだろうが。

「ところで、お前、今日、図書館行くか?」