「なに溜息ついてんだ」
秘書室に戻って帰り支度をしていると、祐人にそう訊かれた。
「いや、専務が廃墟ツアーに行こうとするので。
それが嫌なら、吊り橋だそうです」
とのぞみが言うと、祐人は笑う。
「可愛いな、専務は。
何処も吊り橋効果を狙って選んだんじゃないのか?」
「いや……前半の廃墟ツアーは、とっても趣味の匂いがします」
廃墟ツアーか、と興味を抱いたように祐人は呟く。
「何処行くんだ?」
「猿島とか、うさぎ島とか」
「猿島か。
いいな。
木々に覆い隠された要塞の島だな」
問題はそこですよ、と思う。
何故、二人での初めてのお出かけが、要塞の島?
あの人、ちょっとずれている、と思っていると、
「でも、あの島、確か、愛のトンネルとかいうのがあるらしいぞ。
薄暗くて怖いから、中に入ると自然に手をつないでしまうらしい」
と祐人が言い出した。



