「失礼します、専務。
 先日、お話しました、新入社員の坂下のぞみです。

 専務付きの秘書として配属されましたので、ご挨拶に」
と中に入った祐人が専務に紹介してくれる。

「しっ、失礼致しますっ」
と言いながら、のぞみも専務室に入った。

 ああっ。
 こんなときって、どうしたらいいんだっけ?

 どうしたらいいんだっけっ!?

 秘書検とったけど、思い出せないっ。

 や、役に立たないぞ、秘書検っ!

 いや、役に立たないのは秘書検定ではなく、おのれの頭だったのだが――。

 動転しながらも、
「坂下ですっ。
 よろしくお願い致しますっ」
と頭を下げたとき、

「……坂下?」

 変わった名前でもないのに、デスクで仕事をしながら話を聞いていた専務が顔を上げ、こちらを見た。