わたしと専務のナイショの話

 



「どうだ、坂下。
 会社には慣れたか」

 のぞみの部屋のラグの上に、テーブルを挟んで座った京平は、笑顔でそんなことを訊いてきた。

 面談か。

 なんだろう、この嘘臭さ、と思いながら、のぞみは覚悟を決めて訊いてみた。

「あのー、専務。
 なにかおっしゃりたいことがあるのでは……」

 すると、京平は笑顔のまま、
「……ある」
と言う。

「だが、もうすぐお母さんが来られるので、そこまでは耐えておこう」
と微笑みを顔に貼り付けたまま京平は言ってきた。

 掃除が適当だとクラス全員が怒られる直前もこんな顔してたな、と思いなから、強張っていると、浅子が珈琲を運んできた。

 おかーさん、助けてー、と思うのだが、メデューサに睨まれたように動けない。

 のぞみの顔も不気味に微笑んだまま止まっていた。

 いや、恐怖のあまり表情筋が止まってしまっているのだ。

 京平は笑顔で浅子に応対したあと、珈琲を一口飲んで、のぞみに向き直る。

「お前、今日、御堂と図書館横のカフェに居たそうだな」

 ひい。