じゃあ、そこで、とのぞみは隣りのカフェで珈琲をご馳走になることにした。
外を見るように設置されたカウンターに並んで座る。
「これでいいのか?
お前のキスは珈琲一杯程度の価値、ということになると思うが」
……それもどうかと思うが、まあ、軽く済ませておきたいからな、と横目に祐人を見ながら思っていると、
「そういえば、さっき、山下がお前を可愛いとか言ってたぞ」
と祐人が言ってくる。
「えっ?」
「あいつ、趣味がおかしいんだよな」
と言って、祐人は笑っていた。
おのれ……。
っていうか、永井さんも貴方のことを趣味がおかしいとか言ってましたけどね、と思いながら、のぞみは言う。
「でも、山下さんが私の名前を覚えててくださったのは嬉しいです。
社内、まだ知らない人が多くて。
社食行くたび、緊張しちゃうんですよね。
永井さんたちが、いろんなテーブルの前を通るたびに、二言、三言、みんなと話しているのがちょっと羨ましくて。
ああ、会社に馴染んでるなあって感じで」
と言うと、手許の珈琲を見ながら、なにか考えていた祐人がこちらを振り向き、
「俺もお前の名前、覚えてるぞ」
と言ってきた。



