わたしと専務のナイショの話




 お先に失礼しまーす、と秘書室を出たのぞみの後を祐人が追いかけてきた。

「坂下、今日、暇か?」
とエレベーターの前で訊かれる。

「……暇じゃないです」
と言うと、

「そう警戒するな。
 酔ってないときはお前になど興味はない」
とそれもどうなんだ、と思うようなことを祐人は言ってくる。

 祐人は専務室の方を見ながら、
「専務は今日は会議だから、まだ帰らないはずだ。
 お前が暇なら、この間の詫びに、なにか奢ってやろうかと思ったんだが」
と言うので、

「いえいえ、お気遣いなく。
 実は、今日は、図書館に本を返しに行こうかと思ってまして」
と言うと、

「ああ、じゃあ、ちょうどいいじゃないか。
 俺も車に本載せてんだ」

 俺も行く、と言う。