「さっさと乗れっ。

 脅かそうと思って、内緒で出てきたのに、もうお前が出てて、俺の方が驚いてしまったじゃないか」

 なんだか笑ってしまったが、今、京平の車に乗る気にはなれなかった。

 こんな汚れてしまった私など、専務の車に乗る資格はありません、とか思ってしまったからだ。

「あ、ありがとうございます。
 でも……」
と言いかけたのだが、京平が振り返りながら、

「いいから、早く乗れっ。
 後ろから車が来たじゃないかっ」
と言ってきたので、仕方なくのぞみは急いで乗った。