わたしと専務のナイショの話

「あの手はなんの意味があったんでしょうか?」
とのぞみは、さっきまで二人でしていた壁画のポーズの真似をして見せた。

「身体の部分が赤外線に触れないのなら、手は身体に添わせておくだけでよかったんじゃないですか?」

「もちろんだ」
と腕を組んだ祐人は重々しく頷き、言ってくる。

「そもそも、警備員がウロウロしてるのに、ロビー中に赤外線が張り巡らされてるわけがない」

「……御堂さん、騙しましたね?」

「いや、赤外線が何処かにあるのは確かだ。
 俺も何処かは知らないが」
と祐人はトボケたことを言ってくる。

 騙された。

 いや、正気だったら、最初からおかしいと思ったはずなのだが、自分も酔っていたので、つい、騙されてしまった。

 だが、こちらが正気だったところで、祐人のあの口調で言われたら、仕事のときのくせで、反射的に従ってしまいそうな気もするのだが。