わたしと専務のナイショの話

 



「ついて来てるか、子分」

 へい。

 カラオケボックスから歩いていける場所にあった暗い社屋の前で、祐人が言う。

 こうして見上げると、圧倒されるくらい大きなビルだ。

 ひとりくらい自己主張のないトロくさい奴も居るかな~というしょうもない理由で雇われたのだとしても、ありがたい話だなと、のぞみは思ってしまう。

 仕事に慣れてきても、サボることなど覚えず頑張ろうっ。

 ……うん。
 できるだけ頑張ろう。

 決意がショボく縮んで行きながらも、改めて此処に就職できたことに感謝しつつ、のぞみは祐人の後に続いた。

 警備員さんに挨拶し、ロビーに入ったが、もう灯りはほとんど落としてあって、薄暗い。

 エレベーターに向かおうとした祐人が、おっと、と足を止める。

「この辺、夜間はセキュリティがあるんだよ」

「えっ、そうなんですか?」