わたしと専務のナイショの話

「お前、専務室の方の書類金庫の鍵かけたか?」
と訊いてくる。

「えっ?
 いえ、いつも御堂さんがかけられるので、確認してませんが」

 しまった、と祐人は顔をしめかる。

「タクシーもう来てるから早くって急かされたんで、三度目の確認してないんだよな」

 なんなんですか、三度目の確認って……。

「いや、俺は、戸締りが気になりすぎて、秘書室から出られなくなったりする人なんだ。
 実生活では結構ズボラなんだが、仕事だとな」

 まあ、そのくらいでないと、機密事項の多い文書を取り扱えないか、と思っていると、祐人は立ち上がり、
「ちょっと見てこよう」
と言い出す。

「えっ? 今からですか?」

「此処、会社から近いから確認してくる。
 すぐ戻るよ」

「えー。
 じゃあ、ついて行きますよ」
とのぞみも立ち上がる。

 同じ仕事をしているのに、祐人だけを確認に行かせるわけにはいかない。

 本来は、自分も確認しなければならない立場だからだ。

 まあ、新人なので、まだ任せてはもらえないのだが。