わたしと専務のナイショの話

「飛躍的に上手くなったっていうか。
 前が、飛躍的に下手だったというか」

 いや、飛躍的の使い方がおかしいです、と思いながら、のぞみは甘過ぎるワインを呑んでいた。

 カラオケなんだからしょうがないが、安いワインだ。

 悪酔いしそうだなーと思いながら、
「これでもう二度と、私がブービー賞を取ることはないでしょう」
と呟くと、

「……そんなに取りたかったのか。

 しかし、何故、ブービー賞だ。

 どうせなら、万美子みたいに、優勝狙えよ」
と祐人が言うと、ちょうどマイクを握っていた万美子の耳にもそれが届いたらしく、歌いながら、ほほほほ、と一万円分の商品券を振り始めた。

 しっとり歌い出しそうな雰囲気なのに、アイドル系の曲を新人の子たちと軽く踊りながら歌い始めてびっくりする。

「人の十八番って、聞いてみないとわからないものですね。
 御堂さんは、演歌ですか」

「どんな決めつけだ……」

 安いワインを呑みながら、のぞみは万美子の手にある商品券を見つめていた。