わたしと専務のナイショの話

 車は交差点まで来て、止まっていた。

「お前は俺のなにが気に入らないと言うんだっ?」
と訊いてくる京平に、冷静に考えてみる。

 ……うーむ。
 そう言われてみれば、専務を拒絶する理由がないような。

「そ、そうですねー。
 まあ、とりあえず、おうちが違いすぎるのが、ネックではありますね。

 お金持ちすぎて、ついて行けそうにないというか」
と言うと、

「金持ちだからって差別すんなよ」
と京平が言ってくる。

 いや、一度言ってみたいんだが、そのセリフ……。

「それに、別にうちはそんなたいした金持ちでもない。
 アメリカの大富豪とかと比べてみろ」

 いや、比べるところがおかしいです。

「だが、お前が望むなら、俺はお前のために庶民となろう」

 そう言っている時点で、すでに庶民ではないと思いますが。

 そんな言い争いをしたあと、突然、ふう、と京平は溜息をついた。

「……あんまり叫ばせるから、酔いが覚めたじゃないか。

 酔ってるうちに、勢いで告白しようと思ってたのに」