わたしと専務のナイショの話

 もう十一時半だ。

 今まで仕事だったのだろうか。

 それとも、今から寝るところなのだろうか。

 遅くまで大変でしたね、お疲れ様です、と入れたかったのだが、照れもあって、まるで、仕事の挨拶のように、
『お疲れ様です』
と入れてしまった。

 すぐに、
『電話していいか?』
と入ってくる。

『はい、大丈夫です』
と入れると、電話がかかってきた。

 ひーっ、かかってきたーっ、と当たり前なのに、動揺する。

「こ、こんばんは……」

 思わず硬い声で出てしまうと、
『……こんばんは』
と京平もつられたように硬い返事をしてきた。

 そのまま沈黙する。

『歯は磨いたか?』

 唐突に京平はそんなことを言ってきた。

「は、はい。
 専務はもう磨かれましたか?」

『……これからだ』

「そうですか」

 また沈黙してしまう。