まだ新車の匂いがする車の運転席に、のぞみは乗り込んだ。
すると、助手席のドアが開き、京平が助手席に座る。
「……専務。
なんで、助手席に乗るんですか。
お偉い方は後ろでは?」
助手席は死にやすいからか、偉い人は、大抵、後部座席にどっかりと座っているのに。
肝心なときに役に立たなかった秘書検でも確かそう習ったと思いながら、のぞみは言ったが、京平は、
「後ろにどっかりとなんて座ってられるか。
お前の横に座るのは、なにかあったら、お前の手の上から、ハンドルを握り、お前の足の上から、ブレーキを踏むためだっ」
と言い返してくる。
その言葉に、のぞみは、なんとなく、あかずきんちゃんのオオカミを思い出していた。
『それは、お前の声を聞くためさ』
みたいな。



