わたしと専務のナイショの話

 普通、手を握る。

 キスをする。

 結婚する、では?

 いや、そもそも、もっと最初が抜けている、と思うのぞみを振り返り、京平は言ってきた。

「何故、お前だとできないんだろうな」

 そう言う京平の後ろには、あの三日月の朧月があって。

 なんだか夢のような光景だな、とのぞみは思う。

 昔から、この人のこと、格好いいとは思ってたんだよな。

 だから、みんなにつられたとはいえ、チョコレートもあげてしまったのだ。

 ……まあ、ハッピーバレンタインー! ではあったが、とあの夕暮れどきの学校の昇降口を思い出す。

 あまり日の差さない下駄箱の前。

 湿ってひんやりした空気の中、廊下を歩いてくる京平を見かけた。

 ずいぶん軽い感じにくれたと京平は言うが。

 いや……、恥ずかしかったからですよ、と当時を思い出し、のぞみは思う。