来ないじゃないか、のぞみ……。
仕事をしながら、京平はのぞみのことを考えていた。
今朝は一度も見てないな、と思う。
隣の部屋に、落ち着きのないのぞみの気配を感じることはあるのだが。
専務室に併設されている小さな秘書室へと続く扉を京平は見つめた。
……うーん。
のぞみが気になって、仕事にならんな。
あいつが現れてから、どうも気が散る。
いっそ、出会わない方がよかったか。
今から、撲殺してこようか、とか、うっかり思ってしまったが。
頭の中では、棍棒で殴られたのぞみが、きゅーっと可愛らしく倒れていて、つい、笑ってしまった。
……集中できんな。
京平は、インターフォンで祐人を呼んだ。
「珈琲を頼む」
『坂下ですね』
とすぐに祐人は言ってくる。
こちらの思いがわかっているかのように。
まあ、御堂なら、なにもしゃべらないだろうし、察しはいいし。
バレてかえってよかったかな、とこのときは思っていた。



