わたしと専務のナイショの話

 


 家に帰ると、信雄が待っていた。

「おかえり」
と言った信雄に、ただいま、と言い、のぞみは洗面所に行く。

 戻ってくると、黙ってソファに座っていた信雄が、
「あれからいろいろ考えたんだがな」
と母、浅子が居るキッチンの方を見ながら言ってきた。

「あれだけの男だ。

 お前なぞ、騙されても仕方がないのに、最初から結婚結婚と言ってくれていることに、感謝しなければならないのかもしれないなと思って」

 あ、また専務の株が上がってる……。

「今度連れてきなさい。
 ゆっくり呑みたいから」
と言われてしまった。

 うーん。
 今のセリフ、専務に伝えるべきか、と悩みながら、次の日は車で会社に行った。

 昨日は、専務の車で此処通ったな、と思いながら、町並みを眺める。

 今までひとりで走ってたのに。

 今日はひとりで走ってるのが、なんだか寂しいな、と思ったとき、昨日の別れ際のキスを思い出していた。