わたしと専務のナイショの話

 そういえば、なにかされている最中に、電話がかかってきても、うろたえずに出ろ、と言われたんだったが。

 いや、絶対無理だっ、とのぞみは思う。

 されたあとでも、震えているっ!

 手も震えるので、両手で必死にスマホを握るのぞみに信雄が訊いてきた。

『のぞみ、まだ、先生のおうちか?』

 先生と今も呼ぶのは、専務を牽制してのことだろうかな、と思いながら、
「ううん。
 早く帰った方がいいだろうって、ご飯食べてすぐ、タクシーに乗せてくれた」
とのぞみは、つい、京平の株を上げるようなことを言ってしまう。

 そうか、と信雄は、ホッとしたように言ったあとで、
『先生によろしくな』
と言って、電話を切った。

 いや、だから、もう専務は居ないんだってば、と思いながら、スマホを膝の上に下ろし、のぞみは深く息を吐く。

 それでも気が落ち着かなかったので、外を眺めた。

 車窓の向こうには、京平が立っている場所に続いているのだろう夜の街が見えていた。