わたしと専務のナイショの話

 京平は夜道に立ち、タクシーを見送っているようだった。

 タ、タクシーなんですけどっ。

 タクシーなんですけどっ!

 タクシーなんですけどっ!?

 運転手さん、すぐそこに居たんですけどっ!?

 貴方は、何故、人の居るときの方がキスとかできてしまうのですかっ。

 二人きりのときはできなかったのにっ。

 酔っているからっ?

 変な勢いがあったからっ?

 見栄っ張りだからっ!?
と思うのぞみのスマホが鞄の中で鳴っていた。

 もしや、京平かと慌てて出ると、父、信雄だった。

 本当にかけてきた…。

 いや、でもまあ、遠慮して、専務ではなく、私の方にかけてきたのか?
と思いながら、

「も、もしもし?」
と出た声は震えていた。