わたしと専務のナイショの話

 そのとき、のぞみのスマホが鳴った。

 伽耶子の方を見たまま、それを取ると、
『終わった、坂下。
 今から帰るぞ』
と京平の声がした。

 電話越しでも、距離があっても、さすがに息子の声はわかるらしく。

「あら、京平ね」
と伽耶子は微笑む。

「じゃあ、お邪魔しないよう失礼しようかしら。
 のぞみさん、ぜひ、今度は我が家にいらしてね」
と言って、伽耶子はエレベーターホールに向かい、歩いていってしまう。

 はっ、どうも失礼致します、と心の中で呟きながら、のぞみはその後ろ姿に向かい、深々と頭を下げた。