わたしと専務のナイショの話

「はっ。
 えーっと。

 私は、専務の部下で、秘書室に居ります、坂下のぞみと申しますっ」

 ああっ、結局、全部しゃべってしまったっ。

 てか、最初の、はっ、はなんだっ。

 戦国時代かっ、とうろたえるのぞみに、京平の母は、

「あら、貴女、秘書の方なの?」
と訊いてくる。

「はい。
 その……」

 忘れ物を取りに行ってこいと頼まれまして、と言いたかったのだが、普段、嘘など言わないので、上手く口から出なかった。

 すると、ふーん、と上から下までのぞみを観察した京平の母は、
「ずいぶん若いわね。
 新人さん?」
と訊いてきた。

「は、はい」
と言うと、彼女は溜息をつき、

「新人秘書をたぶらかすとか。
 どういう育ち方をしたのかしらね? 京平は」
と言い出した。

 いや……貴女の息子さんですよね? と思ったのだが。

 まあ、こういう人は乳母の人とかが育てるのかもしれないな、と幾ら京平の家が金持ちとは言え、何処かの国の貴族でもないのに、そんなことを思ってしまう。