わたしと専務のナイショの話

 五千円ももらったが、全然そんな金額ではないほどに京平のマンションは近く。

 いや、これ、歩いても来れませんかね? と大きな京平の車を思い出しながら、のぞみは思う。

 その高層マンションの下に立つと、すぐ側から子どもたちの笑い声が聞こえてきた。

 マンションに併設されている広場は、葉桜で青々としていて、子どもたちがキックスケーターで遊んだりしている。

 いいところだな、とのぞみは周囲を見回した。

 程よく都会で、程よく昔ながらの街並みも残しているというか。

 近くに、いい感じの商店街があるのも、タクシーから見えていた。

 高価そうなマンションではあるが、近寄りがたい感じではなく、普通に子どもの居る世帯もたくさん住んでいるようだった。

 教員だった頃の京平が家族で住んでいても、そう違和感はない感じだ。

 のぞみは、京平に言われた通りにして、入り口のセキュリティを開け、マンションの中へと入っていった。

 エレベーターホールに行く。

 三基あるエレベーターの中の様子は、一階のモニターに全部映し出されているようだった。

 ……中で、おかしなことをするのはやめよう。

「いや、おかしなことって、なんだ?」
と問われても、すぐには思いつかないのだが、なんとなく……。