わたしと専務のナイショの話

「いや~、お風呂好きなんですよ~」
とのぞみは、この間のショールームを思い出しながら笑って言った。

「なんでだ」

「あったまるからです」

「……あったまるだけなら、ストーブかコタツでもよくないか?」

 っていうか、秘書室勤務になったので、なにもあったかくないんだが。

「……転職しましょうか?」

 そんなしょうもない話をしているうちに、店の高級感から来ていた緊張感もほぐれ、ふと訊いてみた。

「そういえば、専務。
 朝、なにを考えてらしたんですか?

 今、考えごとをしてるとおっしゃってましたが」

 嫁になるかもしれない女の困りごとなど、どうでもよくなるくらいの考えごとってなんだ? と思いながら訊いてみると、

「いや、なんで、昨日、お前にキスできなかったんだろうなと考えていた」
と京平は、のぞみの作文より、更にくだらぬことを言ってくる。