わたしと専務のナイショの話

 まあ、料理も酒も申し分なく美味しかったのだが……。

 だが、結婚する気もないのに、こんな高い店で奢ってもらうのは気詰まりだ、と思い、のぞみは言ってみた。

「いえいえ、払いますっ。
 私だって、お給料、それなりにもらう予定ですからっ」

 いえ、貴方のおうちの会社からですけどね……と思って居ると、京平は、フッと鼻で笑い、

「まだちゃんと研修も終わってないような新人にそんなに払うわけないだろ」
と言ってくる。

「ブ、ブラック企業め……」

 会社に通い始めてからの、緊張し通しで大変な日々を思い出し、思わず、思ったことがそのまま口から出てしまう。

「何処がブラック企業だ。

 まあ、押しの強い就職希望者たちに疲れて、お前のようなものを拾ってしまった人事や役員の連中には、深い心の闇があるのかもしれないけどな」