わたしと専務のナイショの話

 



 その日の夜は、今度こそ、ちゃんと待ち合わせて、食事に行った。

 ……結局、珈琲でないうえに、京平が出してくれることになったのだが。

「私が奢るって言ったじゃないですか」
と言うと、京平が、

「お前に払えるか」
と言ってくる。

 のぞみは窓の遥か下にある夜景を見て、ぞわっとしながら、

 誰がこんな高い店にしやがりましたかね?

 いや、金額の話だが……、と思っていた。

 店内は、クラシカルな雰囲気の落ち着いた内装だが、さりげなく置かれている調度品の値段が、おそらく半端ない。

 フロアの隅から流れてくるピアノの生演奏を聴きながら、のぞみは、

 まあ、こういうのもいいんだが。

 もうちょっと気楽に食事できるところの方がよかったな~、と思っていた。

 もっとも、京平は、こういうところでも気楽に食事ができるようで。

 ……お育ちの違いを感じるな。

 やっぱり、この人とは結婚したくない、と改めて思ってしまう。