わたしと専務のナイショの話

 考えてみれば、御堂さん、専務の秘密をバラして歩くような人じゃないよなー。

 まあ、何処が秘密なんだと言われてしまったが……。

『秘密なのは、お前と専務のことじゃないのか』
と祐人には言われたが。

 まあ、なんだか、まだ付き合ってる実感ないからな、とのぞみは思う。

 私のあずかり知らないところで、専務の謎の計画だけが、結婚に向かって、ガンガン進んでいってしまっているようだが――。

 ホッとしたところで、のぞみは人事から頼まれた旅費日当の紙をデスクに置きながら、訊いてみた。

「そういえば、御堂さんが言ってたんですけど。
 専務は、あれだけ勝海舟がお好きなのに、何故、理系の道に進まれたんですか?」

 京平はその紙を見たあとで、片目で睨むように、のぞみを見ると、
「日本史、全部、勝海舟じゃないだろうが」
と言ってくる。

 はあまあ、そうですね。

 そのあと、財布から領収書を取り出す京平を黙って見ていると。

 忘れた頃に、京平が言ってきた。

「……格好いいからだよ」

「え?」