そう呟いたあとで、祐人は言う。

「しかし、知らなかったな。
 専務が、日本史の教師だったとは。

 理系っぽいのに、意外だな」

「いえ、地学でしたよ」
と言って、

「待て。
 なんで、地学で勝海舟が出てくる」
と言われてしまう。

 そういえば、何故、勝海舟の話になったのか……。

 確か、引力がどうの、海面がどうのという話から、勝海舟がアメリカに渡った咸臨丸(かんりんまる)の話に何故かなった気がするんだが……。

 よく考えたら、なんの脈絡もない。

 今思えば、ただ、勝海舟について語りたかっただけなのだろう。

 祐人は、
「まあ、ともかく、お前が当時から専務を気に入ってたのはよくわかった。
 それで、此処で再会して、付き合うようになったのか」
と言ってきた。