いや、貴方、話を聞いてたんですよね? と思いながら、のぞみは言った。

「いえ、私もたいした秘密じゃないと思ってるんですけどね。

 小心者の――

 あっ、失礼。

 小賢しい専務が隠そうとするもんで」

「お前……、なんにもフォローになってないぞ」

 上司を敬う気はあるのかと言われてしまうが。

 まあ、本当に、たいした秘密ではない。

 見栄っ張りな京平が、昔、教師ってのは、一度も学校から出たことのない人間だから、他の職種では使えない、と言われたことを気にして、その事実をひた隠しにしているだけだ。

 京平は立派にこの会社で働いていることだし、教員が他では使えないなんてこと、ないと思うのだが。

 まあ、祐人がそのような思想の持ち主であった場合を考慮し、のぞみは、一応、京平をかばうように言ってみた。

「でも、なかなか情熱のある、いい先生だったんですよ?
 一時間、勝海舟について語っているような」

「いやそれ、単に、勝海舟に情熱があるだけなんじゃないのか……?」