「し、失礼しま~す」
と言い、逃げるように専務用の秘書室から出ようとしたとき、後ろで、ぼそりと祐人が言うのが聞こえてきた。

「なるほどねー……」

 なっ、なにがなるほどなんですかっ、とのぞみは固まり、その表情のまま振り向く。

 なにもかも見透かすような祐人の瞳に、のぞみは、なにも言われてはいないのに、もう駄目だと思った。

 視線がデスクの上にあった、会社の創立記念の重そうな文鎮を見る。

 祐人の視線もそれを追った。

「……殺人はよせ。
 誰にも話さないから」
と青ざめた祐人が言ってきた。