翌朝、教室に入った私は、思わず先輩の姿を探してしまったんだけど、まだ来ていないようだった。
(あれ?)
とりあえず席に着いて、周りを見渡してみると、普段あまり見ない光景が。
(なんで、今朝は沖田くんと塚原くんの周りにあんなに女子が?)
白鳥先輩と比べて、頼りないというレッテルを貼られてしまった感のある沖田くんと武骨で近寄りがたいイメ-ジの塚原くん。失礼ながらこれまで女子の人気が高いとは、お見受けしてなかったんだけど・・・。
不思議な気持ちで、そちらの方を眺めていた私の上から、声が降って来た。
「やってるじゃない。」
びっくりして、声の方を見るといつの間にか、由夏が立っていた。
「由夏・・・。」
「おはよう、って別に驚かすつもりじゃなかったんだけど。」
「おはよう、ところで何のこと?」
「取材よ。」
「取材?」
「そ。あの2人から、みんな先輩のことをいろいろ聞き出そうとしてるのよ。そうじゃなきゃ、女子があいつらに用事があるわけないでしょ。」
由夏の言い草に思わず吹き出しそうになるが、沖田くん達がさすがに気の毒で我慢する。
「やっぱり悠みたいに真面目なこと考えてる子ばっかりじゃない、まさかの先輩の留年でクラスメイトになれたんだよ。チャンスって思うんだよ、普通。」
「フーン。」
気のない返事をする私に、呆れたように由夏は言う。
「もう、なに他人事みたいな声出してんの?」
「だって他人事だもん。」
「教室に入った途端、先輩の姿探してるくせに、よく言うね。」
(ドキッ!見られてたんだ。)
思わず目を逸らす私に、由夏は声を強める。
「悠!」
私が驚いて由夏を見たのとほぼ同時に、教室の扉が開いた。
(先輩!)
先輩の姿を確認すると、私の胸はまた跳ねた。そして面白いことに先輩が入って来ると、騒がしかった教室が一瞬にして静かになった。そして続いてチャイムの音が鳴り響くと、みんなそそくさと自分の席に着く。
そんななんとも不思議な光景の中、先輩は沖田くんと塚原くんと目で挨拶を交わすと私の隣の席に着いた。
少し経つと山上先生が教室に入って来る。日直の号令のあと始まるSHR、いつもの学校の1日のスタ-トだ。
先生の方を向いて、話を聞いていた私の耳に別の声が入って来た。
「あのさ。」
思わず声の方を振り向いた私は、危うく飛び上がりそうになった。なんと先輩が私のことを見ているのだ。
「は、はい、何でしょうか?」
SHR中じゃなきゃ、私はきっと、大音量で素っ頓狂な声を出していたはずだ。
「実は、俺まだ教科書ないんだよ。悪いんだけど、今日1日、見せてもらえないかな?」
「はい、喜んで!」
思わぬ先輩からのお申し出に、すっかり舞い上がる私。
「ありがとう。」
私の返事に笑顔を見せると、先輩は自分の机を私の方に寄せた。
(わわわ、ち、近い・・・。)
動揺しまくる私の心にお構いなしに、先輩は更に私に話し掛けてくる。
「君、名前は?」
「は、はい。申し遅れまして失礼いたしました、水木悠と申します。どうかお見知り置きを。」
とても18歳の女の子とは思えない言葉遣いで返事をしている私に、笑顔を見せる先輩。
「そんな緊張しないでよ、白鳥です。よろしくね、水木さん。」
(せ、先輩が私によろしくって言ってくれた・・・。)
もはやSHRなんて、どっかに吹っ飛んじゃった。顔だって、きっと真っ赤だろう。
そんな私達の方に視線を送った先生が、チラッと意味ありげな笑みを浮かべたことなんて、私は気づくはずもなかったんだ。
(あれ?)
とりあえず席に着いて、周りを見渡してみると、普段あまり見ない光景が。
(なんで、今朝は沖田くんと塚原くんの周りにあんなに女子が?)
白鳥先輩と比べて、頼りないというレッテルを貼られてしまった感のある沖田くんと武骨で近寄りがたいイメ-ジの塚原くん。失礼ながらこれまで女子の人気が高いとは、お見受けしてなかったんだけど・・・。
不思議な気持ちで、そちらの方を眺めていた私の上から、声が降って来た。
「やってるじゃない。」
びっくりして、声の方を見るといつの間にか、由夏が立っていた。
「由夏・・・。」
「おはよう、って別に驚かすつもりじゃなかったんだけど。」
「おはよう、ところで何のこと?」
「取材よ。」
「取材?」
「そ。あの2人から、みんな先輩のことをいろいろ聞き出そうとしてるのよ。そうじゃなきゃ、女子があいつらに用事があるわけないでしょ。」
由夏の言い草に思わず吹き出しそうになるが、沖田くん達がさすがに気の毒で我慢する。
「やっぱり悠みたいに真面目なこと考えてる子ばっかりじゃない、まさかの先輩の留年でクラスメイトになれたんだよ。チャンスって思うんだよ、普通。」
「フーン。」
気のない返事をする私に、呆れたように由夏は言う。
「もう、なに他人事みたいな声出してんの?」
「だって他人事だもん。」
「教室に入った途端、先輩の姿探してるくせに、よく言うね。」
(ドキッ!見られてたんだ。)
思わず目を逸らす私に、由夏は声を強める。
「悠!」
私が驚いて由夏を見たのとほぼ同時に、教室の扉が開いた。
(先輩!)
先輩の姿を確認すると、私の胸はまた跳ねた。そして面白いことに先輩が入って来ると、騒がしかった教室が一瞬にして静かになった。そして続いてチャイムの音が鳴り響くと、みんなそそくさと自分の席に着く。
そんななんとも不思議な光景の中、先輩は沖田くんと塚原くんと目で挨拶を交わすと私の隣の席に着いた。
少し経つと山上先生が教室に入って来る。日直の号令のあと始まるSHR、いつもの学校の1日のスタ-トだ。
先生の方を向いて、話を聞いていた私の耳に別の声が入って来た。
「あのさ。」
思わず声の方を振り向いた私は、危うく飛び上がりそうになった。なんと先輩が私のことを見ているのだ。
「は、はい、何でしょうか?」
SHR中じゃなきゃ、私はきっと、大音量で素っ頓狂な声を出していたはずだ。
「実は、俺まだ教科書ないんだよ。悪いんだけど、今日1日、見せてもらえないかな?」
「はい、喜んで!」
思わぬ先輩からのお申し出に、すっかり舞い上がる私。
「ありがとう。」
私の返事に笑顔を見せると、先輩は自分の机を私の方に寄せた。
(わわわ、ち、近い・・・。)
動揺しまくる私の心にお構いなしに、先輩は更に私に話し掛けてくる。
「君、名前は?」
「は、はい。申し遅れまして失礼いたしました、水木悠と申します。どうかお見知り置きを。」
とても18歳の女の子とは思えない言葉遣いで返事をしている私に、笑顔を見せる先輩。
「そんな緊張しないでよ、白鳥です。よろしくね、水木さん。」
(せ、先輩が私によろしくって言ってくれた・・・。)
もはやSHRなんて、どっかに吹っ飛んじゃった。顔だって、きっと真っ赤だろう。
そんな私達の方に視線を送った先生が、チラッと意味ありげな笑みを浮かべたことなんて、私は気づくはずもなかったんだ。