「相変わらずですね、校長先生は。」

校長室を出た後、俺は横の山上先生に話し掛けた。

「お前達が可愛くて、仕方ないんだよ。何しろ、我が明協高校の名を全国に轟かせてくれたんだからな。」

こちらの方を見ることなく、先生は答える。

「先生もですか?」

「ああ、特にお前みたいな出来の悪い奴は余計だ。4年もお付き合い出来る生徒はなかなかいないからな。」

皮肉げな先生の言葉に、俺は首をすくめるが、といって嫌な気はしていない。山上剛造、担当は日本史。俺にとっては部活の顧問であり、愛情と適度な厳しさを持って我々を指導し、見守ってくれる先生を我々部員は親しみを込めて「ゴ-さん」と呼んでいる。

ゴ-さんに導かれて向かったのは、職員室の横の面接室。ここで復学の手続きをする。

「こういうのって、普通本人がするものなの?だいたい俺、休学届出した覚え、ないんだけど。」

「そりゃ、黙って消えちまったんだからな。マスコミは嗅ぎまわるし、大変だったんだぞ。まぁ校長と親父さんに感謝するんだな。」

確かに1年間学校を離れ、もはや同級生もいない俺をゴ-さんのクラスにしてくれたのは校長の配慮だろうし、親父とは折り合いが悪く、普段ほとんど口も利かない仲だが、突然消えた息子の学籍を休学という形でなんとか取り繕ってくれた今回の処置には素直に頭を下げるしかない。

そうだ、今更ですが俺の名前は白鳥徹。
年齢18、神奈川県某所にある私立明協高校3年、ただし訳アリで在校4年目。

いよいよ1年遅れの2学期が始まるんだ。