黒魔術


       *

薄暗い部屋の中で、黒いフード付きのローブを身にまとった少女が、机の前に座っている。

フードの陰から見えるその顔は、しいなだ。

彼女は今身を乗りだして、机の上に置いた、たてよこ30センチぐらいの箱の中を、虫メガネでのぞきこんでいる。

箱の中にあるのは小さな町の模型だ。

模型の町の中を、アリのように小さなものが立って動いている。

虫メガネで拡大して見えたそれは、森本コオだとわかる。

しいなが魔術を使い、コオの体を極限まで小さくしたのだった。

「ふふふっ、コオ君て、やっぱりかわいい」

まっ赤なルージュを引いた唇のあわいから毒々しい笑い声がもれ、とがった歯が光る。

「これからは、コオ君はずっとあたしのものよ。もう、あんな、はるかなんて女がコオ君に近づいたりすることもないわ。だって……」

しいなは左のほうへ目を向ける。

机の少し左のほうに、もうひとつ同じ形をした箱が置かれていた。

その箱の中にも、同じようなミニチュアの町がある。

その町の中を、アリのように小さくなったはるかが、泣きべそをかきながらさまよい歩いていた。



                 (了)