ミニトマト、ブロッコリー、卵焼き。
赤緑黄色の彩りは完璧に美しい。
よく見ると実際調理してるものは少ないけれど、いざとなると卵焼きひとつだって難しいものだと、少ない経験でも知っている。

「里葎子さん、お弁当って何入れたらいいんですか?」

「お弁当? 昨日の残り物とか、冷凍食品とかでいいのよ」

自分や家族ならそれでいいと思う。
お弁当は毎日の生活なのだから。
だけど、好きな人へのお弁当に冷凍食品はない。

「えっと……自分じゃない人に渡す場合は、どんなのがいいのかなーって」

「ああ、デートのときね」

「デート!」

持っていたおにぎりを放り出して、 両手で顔を押さえる。

「違うの?」

「ただ、ちょっと、紅葉を見に行くだけです」

「女友達と?……なわけないか。その反応で」

「……はい。男の人です」

「ふたりで?」

「……はい。多分」

「それってデートじゃないの?」

ブロッコリーを咀嚼しながら、里葎子さんは納得いかない様子で首をかしげる。

「『デート』って、基本的に恋愛感情を孕んだものじゃないですか。私が頼んだから、付き合ってもらうだけなので」

「でも美夏ちゃんは好きなんでしょう?」

「……はい。好きです。……すごく」

「だったら『デート』でいいじゃない。恋愛感情を孕んでるんだから」