最近、やたらと私に構って来る奴がいる。
いつも何かと絡んで来る。
私は彼の事があまり気にくわない。
正直苦手。
彼は私の妹の友達。
妹が家に友達を連れて来た時に、何度か見た事があった。
名前は何て言うんだっけ?

「アリアー!今日も麗王君来たよー?」
友達が今日の扉の前でそう叫ぶ。
「こんにちは〜!アリアちゃん一緒に帰ろー」
彼は扉の外からひょこっと顔を覗かせる。

ああ、そうだった。
麗王だ。
有栖川麗王。
水色と琥珀色の髪の毛が印象的だ。
一体、どちらが地毛なのだろうか。
いや、あれは本当に地毛なのだろうか。

そんな事を考えながら教室を出て行く。
勿論、彼の事は無視する。
「えー?今日も無視ー?少し僕の事可哀想だと思わない?」
彼は私の無視をあまり気にせず、にこにこと微笑みながら、私の後を付いて来る。
何が『可哀想だと思わなーい?(ウザイ声)』だよ。
可哀想なのは私だよ。
一週間前からいきなり彼が下校時に現れる様になった。
何も共通点が無い奴からいきなり付きまとわれている。
全く良い迷惑だ。

「で、いつまで付いて来る訳?」
私は足を止め、彼に言った。
「え〜?付いて来るって言い方やめてよ。それじゃあまるで、僕がストーカー見たいじゃん」
彼は笑った。
凄く愉快そうに。
「家まで送るよ」
「は?やめて。1人で帰れるし。私は今忙しいの」
私は鞄から本を取り出す。
「だから、近付かないで」
本を開け、止めた足を再び家に向かって動かす。

最近学校の勉強が忙しくて、あまり法律の仕事が出来ていない。
学校の勉強に付いて行くのが精一杯だ。

私の通っている学校は、私立桜花学園。
五校の桜学園の中で一番勉強が重視される学園。
勉強が全ての学園。
勉強さえ出来れば良い学園。
私は高等部第一学年Aクラスで、特待生だ。
学費は全て免除されている。
このまま成績をキープすれば、将来は決まったも同然だ。

私は将来弁護士になる。
その為には勉強しなければいけない。
私には青春を楽しんでいる暇など、無いのだ。

「え、六法全書?アリアちゃん将来は法律系のお仕事?」
彼は私の読んでいた本を、覗き込む様にしていた。
「あー!もう!アンタ何なの?」
私はバンッと音を立てて本を閉じた。
「え?僕?」
彼はきょとんとした顔をした。
私はそれを睨む。

「僕は有栖川麗王。私立桜蘭学園中等部第三学年。S・Aクラスだよ。2月14日生まれのAB型。身長は林檎16個分ぐらいで、体重は林檎の入ったダンボール5箱分くらいかな?好きな物は、スイーツとか洋菓子と、・・・自分かな」

いや、そう言う事を聞いたんじゃない。
しかも、そんなに詳しく教えてくれなくったって良い。
身長と体重林檎って、キティーちゃんかよ。
好きな物が自分って、何処ぞのナルシストだ。

そこから家に着くまで彼はずっと私に話し掛けていたが、それは全て無視してやった。

「もう家着いたんだけど」
玄関前の階段を登り、振り返ってそう聞く。
「んー、そうだね。じゃあ僕」
その時扉が開いた。
中から出て来たのは妹だった。

「アリアちゃん、と、麗王。2人でどうしたの?」
「アリアちゃんと一緒に帰って来たから、ここまで送らせてもらったの」
「あ・・・。そうなんだ」
その時、妹は少し複雑そうな顔をした。