心にきみという青春を描く




「ごめん。小さいタオルしかないんだけどいい?」

先輩は慌ててタオルを持ってきてくれた。


先輩の足元には髪の毛から滴り落ちた水滴。

先輩が濡れないための傘係だったのに結局、前に傾けると『俺はいいから』と突き返されて、そのたびに『ダメです』と私がまた傾ける。

そんなやり取りを何回しただろうか。そうこうしているうちに傘なんて意味がなかったぐらいにお互い濡れてしまったわけだけど。


「先輩こそ拭いてください!」

アレルギーが悪化したら大変だ。


「なに言ってんの。なつめが先に決まってるでしょ」と、そのまま強引にわしゃわしゃと頭を拭かれた。

「ちょ、ちょっと痛いです」

「なつめが動くからだよ」
 
「すいません。じっとしてます」


考えてみれば私は今ものすごい状況にいる気がしてきた。まずここは先輩のお家で、しかも玄関に入れてもらって。その上、先輩にタオルで頭まで拭かれている。

じわりじわりと現実味が増してきて、じわりじわりとまた身体が熱くなっていく。


「わ、私、帰ります……!」 

このままじゃ心臓が壊れてしまう。


「待って」

すると、グイッと腕を引っ張られて先輩に引き止められてしまった。